第301回 日本型3PL「期待していいこと、出来ないこと」(6)

Pen Iconこの記事の執筆者

赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

今年は激変の一年となりそうな事象が相次いで発生しています。

物流業界は今まさに直面する課題が続出し、荷主・物流企業ともに力を合わせて解決方法を模索しなくてはならない『リスクシェアリング時代』の到来です。

・残業60時間上限法令
・アスクル物流センター火災事件
・ヤマト運輸騒動

上記3つの事象は、物流業界へ大きく影響を及ぼす懸念があります。

これら3つの事象が及ぼす影響を簡潔にまとめてみますと、

残業60時間上限(今年直ぐに施行されるわけではないが、焦眉の課題)
・トラックドライバーの拘束時間を短縮化するために、引き取り・集荷時間の短縮化が求められる
・中長期輸送では、2マン体制や輸送距離制限が起きる
・運賃や荷役費が上昇する(コストプレッシャーは非常に大規模な要求となる)
・労務管理コストの上昇

アスクル物流センター火災事件
・危険物法令の改定により危険物倉庫ニーズが急速に高まる
・指定可燃物の法令強化
・防災に関わる費用上昇

ヤマト運輸騒動
・宅配便運賃の上昇
・路線便運賃の上昇
・区域運賃の上昇
・中長距離運賃の上昇
・消費者の宅配運賃負担増
・宅配サービスの二極化

これらのより深い考察に関しては、次回のfunai物流オープンカレッジ(3月15日開催)の時流講話にてお伝えします。 
http://www.f-logi.com/study/flogi_open_201703.php

今シリーズは「日本型3PL」「欧米型3PL」の違いについて考察していきます。 

日本型3PLへ期待していいことのひとつとして、3PLが保有する倉庫(自社所有)はファンドが提供する大型マルチ倉庫に比べて、廉価な保管料金で 調達することが可能です。

3PLが物流センターを賃借した場合、当然支払賃料が発生します。

調達賃料に対する荷主負担は約10%程度(3PLの粗利)。

これが、3PLの自社物件の場合、相場運賃の下限から基準値レベルで供給されます。

また、3PLの自社センター物件費は相場賃料の約30%〜50%程度となるため、荷主企業への値引き幅は比較的余裕があります。

つまり3PLの営業施策として、この物件(倉庫)費を市場価格以下に設定することが可能だと言えます。

荷主企業から見ると、ファンドの大型マルチテナントセンターでは、市場価格以下の倉庫料調達は見込めないが、3PLの自社物件の場合は市場価格以下も期待ができることになります。

この点をもう少し深く考察します。

保管料契約が坪契約の場合、3PLは見積段階で調達原価(賃料)以下を提供することはありません。粗利がどれだけ取れるかは、初期段階で明確となります。

しかし、三期制契約の場合はこの限りではありません。

三期制は変動費となりますので、荷動量や在庫量によって上へも下へもブレが生じます。

事前のデータ分析でシミュレーションした通りの荷動きではなかったり、分析そのものに誤りが生じたりすると、即逆ザヤとなります。

その結果、3PLの拠点収支が悪化し最悪の場合は赤字となります。

最近はこの事象による荷主と3PLの間でトラブルが続発しています。

荷主からすると、以前の坪契約時代から比べると著しく保管料が上昇することになります。

3PLからすると、調達賃料を保管料収入が下回るなどといった現象が起きてしまいます。

なぜトラブルになるかというと、3PLが外部倉庫を活用した場合の事前分析の甘さと、荷主企業の情報開示に問題があるからです。

次回は分析にまつわる荷主と3PLのトラブル事例をお伝えします。

⇒次号に続く

※3PL(Third Party Logistics)の概念は以下をご覧ください。

http://www.f-logi.com/yougo/3pl.html

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

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