物流AI・ロボティクスのイノベーション 

Pen Iconこの記事の執筆者

赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

2018年は物流オペレーションが劇的に変化しようとしています。

深刻な人手不足を背景に、AIとロボットの開発は大競争時代へと突入しています。
今、物流業界におけるAIやロボティクス化がどのようなレベルにあるのか?
今後どうなっていくのかを考察します。

(1)物流オペレーションの4段階(Logistics4.0)

第一段階

作業者の記憶や勘、経験による手作業・リフトを中心とした人力オペレーション

第二段階

倉庫管理システム(WMS)や自動倉庫・仕分ソーターなどのマテハン機器が、単一システムで稼働した人力マシンオペレーションが主流となる

第三段階

IoTよる各システム及びマテハン機器・ロボットなどがリアルタイムで繋がったスマートオペレーション(可視化)が実現する

現在は第二段階の人力マシンオペレーションから第三段階のスマートオペレーションへ移行しています。

今後の予測は以下の通り。

第四段階

SCM全体をAIが制御し、全てが可視化された最適な物流環境が構築される“ネットワーク型オペレーション”に移行する。

この第四段階におけるシステムの全体像としては、以下を想定しています。

(1)SCM統制
(2)貿易業務
(3)拠点在庫管理
(4)輸送管理(国際・国内)
(5)全体コスト管理
(6)拠点WMS
(7)マテハン管理
(8)トラック、リフト等の車両管理
(9)人員管理
(10)決済管理(ブロックチェーン応用)
(11)3Dプリンター管理

と、AIが管理する機能は多岐に渡ります。

これらの機能をどのシステムが分担するのかを考えてみます。

1.AI-SCM管理システム
SCM全体をこのAIシステムが管理します

2.AI搭載WMS 
倉庫オペレーションや要員配置・作業生産性・スタッフ管理・コスト管理・在庫管理を行う

3.AI搭載TMS 
海外を含めた全輸送(海上・航空・陸上・河川・鉄道)を管理します

4.RPA(Robotic Process Automation)
貿易業務や受発注業務、請求業務などを実行します

5.AI搭載決済管理システム
海外を含む全ての決済業務を行います
将来的にはブロックチェーン技術が活用されます

6.AI搭載3Dプリンター
消費地に設置されたオンデマンド物流センターへ導入され、需要予測に基づいた、最適な生産活動を実行・支援する

昨年からの運賃値上げは一巡し、陸運各社の2017年度は好決算を迎える企業も少なくありません。
宅配・路線・一般貨物とそれぞれが増収増益となり、中には過去最高益が予想される企業もあります。
一連の運賃・物流コスト値上げは、深刻な人手不足に対する施策実行費用がその理由であり、今後どのように人材の採用・定着・教育を図っていくのかは、各社の経営手腕として見届けていきたいと思います。

第一段階

作業者の記憶や感、経験による手作業・リフトを中心とした人力オペレーション

第二段階

倉庫管理システム(WMS)や自動倉庫・仕分ソーターなどのマテハン機器が、単一システムで稼働した人力マシンオペレーションが主流となる

第三段階

IoTよる各システム及びマテハン機器・ロボットなどがリアルタイムで繋がったスマートオペレーション(可視化)が実現する

第四段階

SCM全体をAIが制御し、全てが可視化された最適な物流環境が構築される“ネットワーク型オペレーション”に移行する。

今号は、この第四段階における、AI-SCM管理システムについて考察します。

SCMにおいて管理するべき項目は多岐に渡ります。
大まかな区分は、調達管理・生産管理・販売管理となりますが、その全ての工程に物流管理が発生します。

現状は製造業・卸売業・小売業と企業プロセス毎に上述した管理を行っている訳ですが、そこにある膨大な実績データは、各企業が個別に保有しています。

企業によっては、それぞれ自立した機能分担会社が存在し、さらに分断されたデータ群となっている例も多々あります。
これらの分断された実績・予測データは、今後全システムがAIによって統制管理され、必要なデータが必要なプロセスで抽出可能となります。
SCM全体が統制管理されることで、在庫の無駄が極小化します。

今はそれぞれの企業が販売予測をし、顧客のニーズに答えるための安全在庫を抱えて、結果として多くの過剰商品が廃棄されています。

小売で予測された需要予想データが卸へ繋がり、海外調達先や製造業へとシームレスに共有化できることで、過剰生産や無駄な安全在庫は激減可能です。

また、それらの情報が物流プロセスへも共有されて、事前配車が可能となり、効率的な輸配送が実現できます。

陸海空全ての輸送モードが情報統制できれば、予測・計画・実行と複雑化した現代のSCMが極めてシンプルな情報チェーンとなり、全世界レベルでの最適化が実現します。
その一翼を担う技術がブロックチェーンとなるのではと、筆者は予測します。

AIが膨大な情報を管理・統制する頭脳となり、ブロックチェーンがその情報を隅々まで流し込んでいく血管のイメージです。
加速度的な情報技術の進歩は止まることなく進化しています。

10年後の未来は、今私たちが想像している以上の社会となっているものと思われます。

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

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