トラック新法とは?運送業に5年の許可更新制導入で何が変わる?

「トラック新法」が、2024年6月4日に参議院本会議で審議され、賛成多数で可決・成立しました。

トラック新法とは、正式には「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」の通称で、物流業界が直面するドライバー不足や長時間労働、深刻化する「2024年問題」といった課題に対応し、トラック運送事業の健全な運営とドライバーの労働条件改善を目的としています。

本コラムでは、このトラック新法によって具体的に何が変わり、物流業界や荷主企業にどのような影響が考えられるのか、そして期待される効果について詳しく解説していきます。

トラック新法成立で押さえるべき変更点

今回の法改正によって、主に以下の点が変更され、段階的に施行されることになります。

事業許可の更新制導入

トラック運送事業の許可について、5年ごとの更新制が導入されます。

多重下請構造の是正

運送業務の委託が原則として二次下請までに制限されます。

運賃に関する規定の整備

いわゆる「標準的な運賃」の考え方を踏まえ、荷主や元請け事業者に対して、運送事業者が法令を遵守して事業を継続できるよう必要な配慮を行う努力義務などが課されます。また、国が運賃交渉の参考となる「標準的な運賃」を公表できる根拠も維持されます。

荷主・元請け事業者への規制強化

著しく低い運賃での運送依頼の禁止や、荷主都合による長時間の荷待ちを発生させないよう配慮する努力義務などが盛り込まれ、違反する荷主には国土交通大臣による勧告・公表などの措置が取られることがあります。

これらの変更は、公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日から段階的に施行される見込みです。

法案化によって何が変わる?

「許可更新制」の導入

これまでのトラック運送事業の許可は、一度取得すれば基本的に継続が可能でした。しかし、今回の改正案では、5年ごとの更新制の導入が提案されています。事業者の安全管理や法令遵守意識の向上が期待されます。

更新審査の結果、安全管理体制や法令遵守状況が著しく劣悪な事業者は、許可更新が認められない場合があります。許可更新が認められなければ事業継続は不可能となるため、事業者は日頃から安全管理体制の維持や法令遵守意識の向上に努めざるを得ません。

「標準的運賃の法的根拠」の付与

これまで、標準的運賃の収受は業界の自主的な取り組みに委ねられていましたが、今回の改正案では、法的根拠を与えることで、運賃の適正化を促進し、トラック事業者の経営安定に繋げることが期待されます。

現行の「標準的運賃」は法的拘束力を持たないため、荷主は必ずしもこの運賃に従う必要はありません。しかし、改正案では、「標準的運賃」に法的根拠をもたせることで、荷主は正当な理由なく標準的運賃を下回る運賃での取引を一方的に要求することが難しくなります。

また、改正案では、行政機関が標準的運賃を基に、不当な低運賃での取引に対して指導や是正勧告を行うことができるようにすることが明記されると考えられます。

二次下請以降の原則禁止

多重下請構造は、トラックドライバーの労働条件悪化や運賃の低廉化を招く要因の一つとされてきました。今回の改正案では、二次下請以降を原則禁止することで、より透明性の高い取引関係を構築し、ドライバーの待遇改善に繋げることが期待されます。

多重下請構造では、元請事業者から二次、三次と下請事業者が増えるにつれて、各段階で「中間マージン」が発生し、結果的に実運送会社が収受できる運賃が減少する要因となっていました。

また、事故や遅延が発生した場合、責任の所在が曖昧になりがちですが、二次下請以降の原則禁止により、責任の所在が明確になります。元請事業者は下請事業者への監督責任をより強く意識するようになり、下請に無理な仕事を押し付けることも難しくなると考えられます。

白ナンバー車の規制強化

これまで、荷主企業の自家用トラック(いわゆる白ナンバー)を使った運送は、取締りが難しく、違法行為が行われても適切な指導が十分とはいえませんでした。

今回の改正案では、「白ナンバートラック」の利用を是正指導の対象とするだけでなく、違反行為として明確に位置づけることで、荷主企業に対するプレッシャーを高め、違法行為の抑止効果を高めることが期待されています。

さいごに

このような取り組みの背景には、物流業界の課題解決が待ったなしの状態であることを示しています。しかしながら、二次請け以降の禁止や、安全管理・法令遵守の徹底などは中小事業者の負担やコスト増となり、場合によっては運送会社の廃業につながりかねません。運送会社の実態も踏まえたうえで、法改正は慎重に進める必要があります。

今回の改正案は、あくまで法案(全日本トラック協会からの要望)段階であり、現時点で正式に決定したわけではありません。また、今後、国会での審議や関係各所との調整を経て、内容が修正されたり、施行時期が変更されたりする可能性もあります。

最新情報については、当社ウェブサイトやメルマガなどで随時発信してまいりますので、引き続きご注目ください。

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