売上至上主義の落とし穴 ~売上に係る物流コスト、どこまで可視化できていますか?~
企業にとって、商品を販売拡大させることは会社の繁栄に不可欠な要素です。一見すると、売上総利益を上げることは利益を増やすことに繋がるように見えますが、必ずしもそうとは言えません。
この誤った認識が進んだ結果、企業が売上を伸ばすことだけを目標とする経営方針を取ることを「売上至上主義」と呼ばれています。実際には、本来会社が重視すべき指標は、売上総利益から販売管理費や一般管理費を差し引いた「営業利益」です。もちろん、営業利益を考慮できている企業様は多いかと思います。
しかしながら、正しい方向性で物流改善を行うにあたっては、更に踏み込んだ、「製品当たり営業利益」ないし「顧客当たり営業利益」までを考慮することが望ましいです。
今回は「製品当たり営業利益」「顧客当たり営業利益」を活用した物流改善実行までの流れと有効性をお伝えしていきたいと思います。
- 【関連するダウンロード資料】
- →「適正な物流コストとは?物流戦略とコスト管理の手法」のダウンロードはこちら
目次
営業利益対物流コストを活用した改善を実行するためには?
ステップ1:物流コストの現状把握
物流コストの現状把握は、定量分析(データ解析)と定性分析(関係者ヒアリング・現場視察による実態調査)の両面から行います。製品・顧客別の営業利益は、売上数量・売上金額・原価金額・按分原価・請求運賃按分額・按分倉庫料等を用いて算出します。
弊社が現状把握を行ったお客様の中にも、「製品当たりの営業利益を見てみたところ、配送手段や保管効率が影響して赤字化している製品があった…」というお客様はいらっしゃいます。
ステップ2:物流コストの評価・課題抽出
現状把握の次のステップとして、各項目でかかっている物流コストの評価を行います。評価内容は、市場の比較、コストに反映されるような物流実態(作業、納品条件、オーダー時間、リードタイム、付帯作業等)の明確化、コストに反映されるような物流事情(ドライバー・作業員雇用、給与形態、中長距離輸送の実態、荷主への要望等)の明確化等です。
ステップ3:アクションプランの作成・KPI設定
抽出された課題に対して、具体的に実行するためのアクションプラン作成とKPI設定を行います。その際には、短期で効果が期待できるものから投資や経営判断が必要な中長期策まで考慮しアクションプランを策定すること、因果関係を明確にし、一貫性と整合性を持ってKPIを設定することが重要なポイントです。
上記3つのステップを通して適切な方向性で改善策を定めたのち、実行に移っていきます。
営業利益対物流コストを具体的に示すことの有効性
営業利益対物流コストを具体的に把握することは、改善策の決定以外にも大きなメリットがあります。
それは、経営層や営業担当者といった関係者にも物流コストの重要性を理解してもらえるという点です。いくら売り上げが伸びたとしても、過剰なサービスにより売上以上に物流コストがかかってしまっては意味がありません。
具体的な物流コストを発信していくことで、物流担当者だけでなく、企業全体として物流を考慮した営業利益増大という目的意識を持てるようになります。
日本ロジスティクスシステム協会が毎年実施している「物流コスト調査」によると、荷主企業の売上高に対する物流コスト比率は長期的に上昇傾向にあります。情勢の変化により、運賃や人件費の単価を下げることが難しくなってきている今、営業利益関係者同士が同じ認識を持てる仕組みを構築することが必須といえるでしょう。
同業他社の物流改善から次なる一手を考える
物流コストの可視化に先進的に取り組んだ企業では新たなビジネスチャンスや経済的メリットを得る可能性が高まります。一方で、どのように戦略を立てていくのかは、業種・業態により異なるため、注意が必要です。
同業種・同業態の他社はどのように戦略を立てているのか?過去に同じ状況から取り組んだ事例があるのか?船井総研ロジでは、そんなお客様のお声に応えるため、荷主企業の物流担当者が集う「ロジスティクス・リーダーシップ・サロン」を2024年1月より新しく開始しました。
当会合では直接担当者が集まることで様々な物流課題(2024問題・共同配送・行政方針対策・コスト削減・業務改善・ESGなど)について意見交換します。他社と情報共有する場としてご活用いただければと思っております。 ご興味ある担当者様は是非一度参加ください。お試し無料参加可能です。
【関連する無料ダウンロード】
適正な物流コストとは?物流戦略とコスト管理の手法
資料では、物流における価格決定の要素、「市場価格」の押さえ方、コスト検証の視点など、荷主企業がとるべき物流戦略とコスト管理の手法をくわしく解説します。
【以下のことが分かります】
- ・物流コスト水準を知るための手法
- ・「市場価格と同等」とは
- ・市場価格と同等企業の取るべき物流戦略
- ・「市場価格より低水準」とは
- ・物流コストを正しく読み解くための手法
- ・市場価格より低水準企業の取るべき物流戦略