物流面の規制強化はESGロジスティクス実行のチャンス

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田代 三紀子

船井総研ロジ株式会社 執行役員 兼 コンサルティング本部 副本部長

製造業・小売業を中心とした荷主企業に対して、物流戦略策定の支援を行い、物流拠点の見直し、コスト削減策の提案、物流コンペの支援を数多く行ってきた。また、物流子会社に対しては存在価値、あるべき姿の策定、他社との競争力評価(物流子会社評価)を行っている。得意なカテゴリーは、化学、日用雑貨など。また、物流をテーマにした数少ない女性コンサルタントとして、脱炭素、ESGロジスティクス実行に向けた研修やコンサルティングを行っている。

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2024年2月13日に国土交通省は、2024年問題への対応として物流の効率化を実現すべく、各種物流面の取り組みの義務化や、罰則規定などが盛り込まれた法律の改正案が閣議決定されたことを発表しました。本コラムは、法律の改正案について解説いたします。

改正案には企業への罰則規定が明文化された?

改正案の中で、荷主企業に大きく関係する内容は以下のとおりです。

  • ・物流効率化の取り組み実施(待機時間の削減、荷役作業の簡素化・時間短縮、積載率向上など)
  • ・物流統括管理者の専任

上記の内容は、2024年問題対応に関連し、昨年政府が発表した「物流革新に向けた政策パッケージ」「物流革新緊急パッケージ」、国土交通省・経済産業省・農林水産省が合同で発表した「物流の適正化・生産性向上に向けたガイドライン」の中で記載されていた内容でもあります。それでは、これまで発表された内容と今回閣議決定された法改正案で、大きく異なる内容はどのような点でしょうか。それは「特定事業者」に対して、計画の作成や報告の義務付けをすること、それらの取り組みが不十分な場合には罰則が科せられることが明文化された点です。

「特定事業者」とは具体的にどのような事業者のことを指すのでしょうか。現時点においては検討中で、まだ明確な基準は決まっていないようですが、取扱貨物量に応じて設定されるようです。

取扱貨物量に応じてとなると、「自社は規模も小さいし、特定事業者には含まれないし、罰則対象にはならないから関係ない」と考える方も少なくないかもしれません。自社には関係ない、ではなく、社会インフラでもある物流を持続可能なものにするためには、関係する企業すべてが日本国内における物流の実態を正しく認識し、改善に向けた活動に取り組むことが必要です。

日本の物流を持続可能なものにするためには?

では、まず何から取り組めばよいのか?と思われる方には、以下のチェックリストをもとに自社の物流実態を可視化することから始めましょう。

物流効率化に向けた取り組み状況チェックリスト

物流面の規制強化はESGロジスティクス実行のチャンス_船井総研ロジ

チェックリストに対して、「対応できている」「対応できていない」の回答以外に、「実態不明」という回答もあるのではないでしょうか。その場合には、まず自社がどのような状況になっているか、知ることから始めましょう。

例えば、荷待ち・荷役作業の時間がどれぐらい発生しているのか把握されていない場合、まずは、実際に現場を訪問して自身の目で見て確かめることです。人から聞いた話、データで集計した情報なども、もちろん必要ですが、工場へ集荷に来たトラックの積み込みの状況や委託している物流現場の実態などは、自身の目で見て感じることが、最も理解や認識が深まることでしょう。

また、これらの実態を把握し、必要に応じた対策を建て、実行をすることは、ESGの「S:社会」「G:ガバナンス」の取り組みにも大きく関係します。持続可能な物流の構築がESGロジスティクス実行にもつながります。社会貢献度の高い取り組みとして、改めて社内関係部門への周知を含めて自社で取り組みを進めてみてはいかがでしょうか。

【前回の記事】物流担当者に求められる運営体制最適化の進め方とは?

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