物流現場で活躍する女性 2016.02.08

ブリヂストン物流株式会社 西日本支社 事業管理課長 江頭 幸子 様

今回は、ブリヂストン物流株式会社 西日本支社 事業管理課長の江頭幸子様にお話を伺いました。
(オブザーバーとして経営企画部長の杉山 鋼児様が同席)

同社は全世界に誇るタイヤ業界のトップメーカーである、株式会社ブリヂストンの物流子会社であります。
江頭様は事業所の所長を経験され、2015年5月に西日本支社の事業管理課長に就任されました。

“出身地である久留米はブリヂストン発祥の地。是非、ブリヂストンで仕事がしたい!”

-江頭様のこれまでの経歴について教えてください

「久留米におりましたので、久留米はブリヂストン発祥の地ということもあり、“是非、ブリヂストンで仕事がしたい”という思いがありました。パソコンやシステム関連に興味がありましたので、大学卒業後、ブリヂストンのグループ会社であるシステム会社に新卒で入社しました。結婚を機に一旦退職しましたが、その後生活が落ち着いた時期に仕事を探していると、前職の上司より紹介いただいたのが、ブリヂストン物流でした。」

「ブリヂストン物流には、アルバイトとして入社しました。入社してからしばらくはブリヂストン製品を作る原材料の事業所を数箇所経験し、入社から10年以上経って初めてトラックやバスのタイヤを取扱う事業所に配属されたときに、事業所長になりました。」

“子供をしっかり育てて大学まで通わせる”

-アルバイトから正社員へステップアップされたきっかけは何でしょうか

「正社員になればお給料がアップしますし、子供が二人いるのでしっかり育てて大学まで通わせようと思っていましたので、正社員を目指していました。
しかし、当時はアルバイト入社から正社員になる仕組みが整備されていませんでしたので正社員になるのに7年半ほどかかりました。“男性は正社員になれるのに、女性はなかなかなれない”と当時の制度に対して誰彼かまわず、“おかしいです!”と話していました(笑)。
現在は制度が変わり、男女関係無く能力さえあればステップアップすることが可能です。」

“「おまえがなんばしきっとかー!」”

-初めての女性事業所長ということで、周囲の反応はいかがでしたか

「事業所長として配属された大刀洗事業所には13~14名の社員がおり、その中で女性は事業所長1人で事業所の方も戸惑っていたと思います。なんで大刀洗の事業所に女性事業所長が来たのかと思われていたでしょう。製品の知識が無いなか、女性初の事業所長で、最初は戸惑いがありましたが気にしていてもしょうがないと思うようにしました。失敗してもいい、上司が私のことを任命してくれたのだから、一生懸命やるだけだと思いました。」

「女性として、男性とどのように接したらいいのか悩みました。相手も戸惑っているな、私が話しかけても他の男性と話しているような本音を話しづらい部分があるな、と感じるときもありました。その場合は無理に話しをせずに、他の人を経由して“あの人、大丈夫かな”と確認してもらうなど、気を使っていました。それは女性に対しても同じです。基本は話好きなので、何かあればすぐに話すようにしていました。」

「事業所には私より10歳ほど年上の人もいましたので、そこに年下の女性上司が来て、いい思いはしなかったようです。“おまえがなんばしきっとかー!”と最初はいつも怒ったような感じだったのですが、私が“そうですよね、私は何もできないです。だから教えてください”と、私の一生懸命覚えたいという思いが伝わったようで、それからは私の一番の味方になってくださり、色々と協力していただきました。」

朝の挨拶運動の様子(一番左が江頭様)

“何かで一番になろう”

-仕事上の成功談、嬉しかったことは何でしょうか

「私が女性事業所長として大刀洗事業所にいた時に、作業主任(現場監督者)の方から“一緒に何かで一番になろう”という話がでました。その頃ちょうど、社内で3Sコンテストが始まり、東西に分かれて横綱・大関・関脇といった番付で評価する制度ができました。何で一番になるか考えたとき、私は製品の知識はないが、掃除が好きなので、掃除だったら一番になれると思い、3S(整理、整頓、清掃)で一番を取れるように頑張ろうと決めました。

昨年の春に大刀洗事業所は横綱に番付されました。3Sへの取組みはどの事業所もすばらしく、大刀洗事業所の取組内容が飛びぬけていたわけではないですが、活動に対する努力や成果を認めていただきました。
事業所の方々から“所長が一番取るってゆっとちゃろー、だからしょうがなかたい”と掃除を一緒に頑張ってくれる人が出てきてくれたことが、とても嬉しかったです。」

“「ボールペンがなくなりました・・・」”

-逆に失敗談、苦労したことは何でしょうか

「原料事業所に配属されていたときのことです。原材料を練り合わせゴム材料を作る精錬という一番異物混入をしてはいけない工程でボールペンがなくなってしまいました。朝出社しましたら、委託業者様から“ボールペンがなくなりました”と言われ愕然。精錬工程の作業主任(現場監督者)の方に伝えたところ、“見つかるまで探せ!”と言われ、なくした人が動いた範囲を必死に探しました。

ゴムの中には入っていないと思うのですが、1%でもその可能性があるとまずいので、とにかく一生懸命探しました。見つからなくて、“なんてお詫びしたらいいのだろう”と考えながら、何度も何度も探し、もう最後だと思いながらまた同じ箇所を探しに行ったところ、無くしたボールペンを発見できました。

そのときまで、なくした事が分かる仕組みはあったのですが、なくならない仕組みはなかったんです。そこで、自分の甘さに気付きました。そんなに無くなるものではないし、という軽い気持ちがあったのです。大失敗したと思ったので、このトラブルをきっかけに無くならない仕組みを作りました。」

“一歩踏み込んだ「おもてなし」”

-女性ならではの気付きはなんでしょうか

「事業所に配属されていたとき、事業所に集荷に来られる女性ドライバーの方と話す機会がありました。女性ドライバーさんからよく聞くのは、長距離運転をされていて、トイレを探すことが大変だという事です。 当社はおもてなしに力を入れており、トイレや休憩所にお花を飾ったりしておもてなし感を出しています。もう一歩踏み込むと、女性の場合は男性と同じ休憩所では遠慮してしまいがちですので、別の休憩所を用意するということが考えられます。

また、私は外のトイレが怖かったり、整備されていなかったりしますので、あまり好きではなく、そういった目線から見れば、事業所に来ていただいて、トイレがキレイなだけで“あそこは良かった”と思ってもらえたらいいですね。
ドライバーさんの確保という意味では細かいところですが、“あの事業所であれば行ってもいい”と思ってもらえるような、おもてなしをやるべきだと思います。」

地域貢献・交流を目的に大刀洗事業所の従業員の方々が事業所近辺の清掃を実施(右が江頭様)

“保育所で子供がひとりぼっち”

-今後、物流現場で活躍する女性を増やすために企業として努力して欲しいことはありますか

「子供を保育園に預けていたときがあったのですが、延長保育終了時間の19時に迎えに行くと、子供が最後ひとりぼっちということもありました。遅くなるときは、保育園まで迎えに行って、会社の休憩所を借りて、そこで子供に過ごしてもらい、仕事に戻ったこともありました。会社として保育施設があればいいなと思いました。」

(杉山様)「東京都小平市にも事業所があります。そこにはブリヂストングループの従業員が多くいますので、グループの保育施設があります。しかし、十数名しかいない事業所に保育所を作るのは難しく、そこは社会がサポートする必要があるのではと思います。」

“「学びの場」に女性がただ一人”

-江頭様の後に続く女性社員を増やしていくために、何か構想はありますか?

「私が管理職として経験した知識を伝えていかなければならないと思います。私自身、事業所に配属されていたとき、管理職は本社を経験しないとなれない?女性管理職が過去にいなかったので先がどうなるのかな?といつも不安に感じていました。そんな中で私が管理職になったときに事業所のスタッフや女性社員の方々が喜んでくれました。
江頭がダメだったから女性はダメだと言われないように、私の後に続く女性管理職候補を育てていかなければならないと感じています。早く、私の次の女性管理職が誕生し、同じ女性管理職という立場で話ができたらいいなと思います。そして一緒に女性管理職の育成を協力して行えたらいいなと思います。」

本社マネジメント巡回の様子(中央が江頭様)

「あとは、女性に経験する機会を与えることです。私はリーダー研修や作業主任(現場監督者)補佐研修など、色々な研修に参加させてもらいました。気付くと、そのような場に女性が少なく、女性一人が男性の中にいる状況でした。参加したい人は参加できる仕組みになっていると思いますが、学びたい人には学びの機会を与えてあげたいです。」“「女性初の管理職」の周りの評判は?”

-江頭様の様子について社内ではどのようにお聞きになっていますか?

(杉山様)「女性管理職が、一人しかいないので、目立つところはありますが、男性、女性というより“課長”として周りが評価してくれていると思います。
江頭さんが所属している西日本支社の事業管理課は大変な部署です。西日本支社は当社の3支社あるうち、最も大きな支社で、当社の全35事業所のうち半分ほどが西日本支社になります。事業所の所長と同格の役職ではありますが、その所長を束ねる必要もあります。他の所長・課長のポジション以上に人望や信頼(信用)がなければ出来ないポジションです。
江頭さんの存在を見た女性社員が“私たちも、江頭さんのようになれるんだ”と思ってもらえるような目標(ロールモデル)になっていると感じます。」


取材後記

 取材の中で、「おもてなしに力を入れている」といったコメントが非常に印象に残りました。事業所に来られる運送会社様は、ブリヂストングループのお客様であり、パートナー会社でもあります。その中でお互いにどのようにしたら気持ちよく仕事ができるのか考えられているということが伝わりました。
 特に事業所に来られる女性トラックドライバーの方へのケアは同じ女性でなければ、伝わりづらい面があります。女性ドライバーのネットワークで、「あの事業所はキレイでよかったよ」といった口コミが広まり、ドライバー不足が騒がれる世の中において、女性ドライバーが増え、多くの女性ドライバーがたくさん訪れる会社になる日が、近い将来、訪れるのではないでしょうか。

  • 今回取材させていただいた企業

    会社名
    ブリヂストン物流株式会社
    設立
    1995年7月1日
    資本金
    4億
    株主
    株式会社ブリヂストン 100%出資
    代表者
    代表取締役 坂梨 明
    年商
    430億(2014年時点)
    従業員数
    1,051名(2014年12月時点)
    事業内容
    ブリヂストングループ、グループ外のお客様に関わる物流業務
    企業概要
    ブリヂストングループの物流会社として長年培ってきた物流現場のノウハウ・技術とブランド力・スケールメリットと言った強みをフルに活かした輸送・保管の競争力に加え、全国に展開するネットワーク力と言った強みをフルに活かして、グループ内外のお客様の物流品質向上とコスト改善につながるベストサービスを提供しております。
    URL
    http://www.bsb.co.jp/

Pen Iconこの記事の執筆者

田代 三紀子

船井総研ロジ株式会社 シニアコンサルタント

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