燃料価格からみる世界経済の未来

船井総研ロジ

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燃料の価格が上がっている?!

私たちの生活にじわじわとしかし確実に影響を与えるもの、それが燃料価格です。
例えば、私たちの社会生活に自動車は欠かせません。
最近では少しずつ電気自動車も普及し始めているものの、ガソリンが自動車の主要燃料であることは今も変わりません。
個人、家族単位の移動手段としてだけでなく、流通を支えるトラックやタンクローリー、工事現場などで働く建機、さらにはバスや飛行機など旅客用に至るまで、ガソリンや軽油を燃料として動いています。
2016年秋以降、燃料価格が徐々に高騰していると感じている方も多いのではないでしょうか。
では、ここで軽油を例に過去7年間の小売価格の推移をみてみましょう。

※一般財団法人日本エネルギー経済研究所 石油情報センター発表の一般小売価格調査「給油所ガソリン・軽油・灯油」をもとに船井総研ロジ株式会社にて作成。
※2012年2月全国平均小売価格を100%とする。 ※消費税抜価格

長期的には、2013年に入ってから高騰傾向となったものの、2014年夏をピークにそれ以降は急落し、2015年初に一度安値を付けました。その後やや戻ったものの、2016年3月に底を打ちその後は上下しながら上昇傾向が続いています。
長期的なスパンでみると直近2年の最安値の時期を抜けたといえるでしょう。

値動きに影響を与えている背景

では2016年に入ってからの1年間の値動きを切り取って見てみましょう。
どういった背景が値動きに影響を与えているのでしょうか。

2016年11月30日石油輸出国機構(OPEC)は原油減産に合意しました。
減産はリーマンショック後の2008年12月以来8年ぶりのことです。
OPEC開催前は減産を主張するサウジアラビアと増産したいイランとの間で利害が対立しており減産合意は難しいのではという市場予想がありました。
OPECに加盟していないロシアなどの産油国も減産に同調したため、ここ2年ほど続いていた超原油安に歯止めがかかるのではといわれています。
原油価格の低迷に苦しんできた産油国は価格の底上げに期待をかける一方で、原油のほぼすべてを輸入に頼る日本にとって急激な価格上昇は、電気代や原材料価格の上昇を通じて国民生活や企業活動に広く影響を与えることになります。
加えて、円安ドル高の影響をうけ、原油の輸入コストは増大しています。
ANAとJALは、国際線の旅客運賃に上乗せする燃油サーチャージ(燃油特別付加運賃)を2月から10カ月ぶりに復活させる方針を発表しました。

注目すべき一大産油国であるアメリカの存在

このような原油価格をとりまく情勢の中で、注目すべきは一大産油国であるアメリカの存在です。アメリカはこれまで自国の原油を輸出することはありませんでしたが、現在国内ではかなりの過剰状態になっていて、輸出禁止をだんだん緩和しています。
また、シェールガスの開発でも世界をリードしているのがアメリカです。
現在シェールガスの開発コストよりも安いという理由で石油が選ばれていますが、今後技術革新が進んだ結果シェールガスの開発コストが下がり石油に対抗できるエネルギーとなる可能性も考えられます。トランプ大統領もエネルギー開発を最重要課題と捉えており、シェールガスが息を吹き返し増産する事態になれば、原油価格は想定したほど上がらないかもしれません。
結果、OPEC加盟国の経済に打撃を与え、新興国の景気が悪化し世界経済の景気後退を引き起こす可能性も潜んでいます。

2月に入り燃料価格の動きは落ち着いたようですが、今後も動向をみていく必要があるといえるでしょう。

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