物流戦略策定時に押さえるBCPの3つのポイント

先日、大阪北部地震が発生し、皆様の業務・生活にも影響があったのではないでしょうか。

物流業界にも影響があり、国交省から営業倉庫26社で壁・シャッターなどへの被害が確認されたとの報告がありました。

あくまで報告は一部であり、倉庫保管品の落下や庫内作業者のケガなども含めると何倍もの被害件数があると思われます。

このような地震が発生するたび、荷主企業各社の社内でBCP(Business Continuity Planning:事業継続計画)策定が議題として挙がる企業も多いのではないでしょうか。

今回は物流の見直しを検討している企業も多い時期かと思いますので、物流戦略を策定する際に抑えていただきたいBCPに関するポイントを3点お伝えします。

  • 物流拠点の分散

 荷主企業が物流戦略の見直しを行っている大きな目的の一つは、実運送会社の配送距離を短縮し、配送コストを削減することが挙げられます。

得意先の納品先やそれぞれの物量・頻度を分析し、適正な物流拠点数や立地を検討するという流れになります。

しかし、BCPを加味した場合、更なる検討が必要となります。

地震や台風などにより1拠点の機能が失われた際、残りの拠点で配送をカバーすることができるかを検討しなければなりません。

例えば東西2拠点の運用で西日本の拠点機能が停止した場合、東日本の拠点から西日本へ供給することが想定されます。

しかし、東日本から西日本全域をカバーする場合、配送リードタイムが伸び、顧客へのサービスレベル低下が想定されます。

そもそもBCPは有事の際にも迅速に通常と同程度の運用に立て直すことが目的となるため、サービスレベルが低下しないよう検討しなければなりません。

そこでよく拠点候補として挙げられるのが、中部地方の拠点になります。中部地方、特に愛知県は高速道路網も発達しており、東西どちらでも東阪と大差ないリードタイムで対応することが可能です。

しかし、BCPの検討を行う上で必要となるのは、配送機能への対策だけでは不足です。次のポイントも抑えてください。

  • 自動倉庫を利用しないアナログ倉庫の活用

 中部地方に拠点を設置し、先ほどの例のように西日本の拠点機能が停止した場合、中部地方にも多少の被害があることが想定されます。

多少の被害でも物流機能を維持できるよう、被災拠点よりも柔軟な設計が必要となります。

そのため、BCP対応拠点の倉庫はネステナやパレットラックなどの什器を活用した保管倉庫にするべきであると考えています。

近年、業務効率とともに保管効率にも意識を向ける荷主企業が多く、自動倉庫の導入を積極的に検討されています。

しかし、自動倉庫は大規模なマシンであるため、通常運転時には高保管効率・高作業効率の運用ができますが、地震などの災害により一部の躯体の損傷で全体機能が停止してしまう恐れがあります。

BCP対応拠点の存在意義を全うするためにも、複雑で修繕に期間を要する構造のマテハンは導入するべきではありません。

 さて、保管在庫が動かせる状況であれば万事解決というわけではありません。今回最後のポイントが次になります。

  • WMSの複数サーバー拠点化による相互補完

 近年の倉庫はWMSを導入している物流企業の運営が大半を占めており、荷主企業も情報システム面での機能に安心できる物流企業をパートナーとして選定されるのではないかと思います。

しかし、WMSを運用する上で必要となるのが、データの蓄積や処理を行うためのサーバーです。

そのサーバーが地震などの影響を受け、損傷・機能停止した際、商品や倉庫が無事でも在庫情報や出荷指示などの必要な情報を得られないため、モノはあるのに出荷対応ができないという事態になりかねません。

WMSを用いず、急遽アナログでの対応を試みるも、処理速度の低下による出荷キャパシティの大幅減少、検品精度低下による誤出荷多発など、得意先からのクレームが鳴りやまないということが懸念されます。

このような事態を回避するため、サーバーの設置拠点にも目を向ける必要があります。サーバーも物流拠点と同様、災害を意識して複数拠点で管理し、相互に情報の共有ができる体制にしておく必要があります。

最近ではランニングコストが比較的高くなりますが、クラウドサーバーも普及していますので、そちらの活用も有用です。

 以上、①拠点配置の考え方 ②倉庫設計の考え方 ③情報管理の考え方の3点についてお伝えしました。

基本的な考え方は有事の際でも全国配送可能な物流スキームを構築するということになります。

つまり、有事の際にのみ100%の機能を発揮できるということになるため、通常時は過剰な体制になることとなります。

そのため、いつ起こるかもわからない、そもそも起こるかもわからない有事に対し、多額の投資を検討する企業の腰が重くなるのも分かります。

しかし、物流戦略の策定を考えられる今だからこそ、BCPにも目を向けて検討してみてはいかがでしょうか。

BCPも踏まえ、物流体制も適正化できるよう検討いただけますと幸いです。

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