物流業界における運送会社の置かれている環境と荷主企業が取るべき対策

船井総研ロジ

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船井総研ロジ

物流業界の実態

昨年は、大手宅配会社が大幅な値上げを行い物流業界に激震を与えたのは記憶に新しいかと思います。
この値上げを筆頭に、大手の路線会社や中堅の路線会社も値上げを行い、配送費は全体的に高騰しています。
荷主企業としては今年も運送会社がどのような動き方をするのか気になるところです。

そこで、ここでは運送会社が現状置かれている環境と今後どのような動きをするのか?そしてそれに対して荷主企業はどのような対策をとるべきなのか?について少しお話をしたいと思います。

物流業界における運送会社の置かれている環境

運送会社が置かれている環境としては大きく3つ挙げることができます。

まず一つ目はドライバー不足です。

過酷な労働環境(平成28年賃金構造基本統計調査によると所定内労働時間は他の業種に比べると10時間以上/月も多い)に加えてそれに見合った対価がもらえていない(平成28年賃金構造基本統計調査から算出すると普通・小型貨物自動車のドライバー平均年収400万円前後、大型貨物自動車のドライバー平均年収450万円前後)ため、若年層がドライバーになろうという姿勢になりづらいのが現状です。

二つ目は車両不足が挙げられます。

下記は総務省統計局が発表している2013年から2017年の自動車保有車両数を表しています。
2013年と比較した増減を見ると年々車両台数は減少傾向であることが読み取れるため、車両不足は明らかでしょう。
(※車種別でみると普通車(自家用・営業用)と軽自動車(四輪営業用)は年々車両数が増加、小型車(自家用・営業用)と軽自動車(四輪自家用)は年々減少傾向であるため、世間で求められている車両・車格が限定的になってきているということも読み取れます。)

また、3つ目は既存荷主企業の物量が年々増大していることです。

ドライバー不足・車両不足に拍車をかけるように既存荷主企業の物量が増えているため、その対応に手一杯になっていることも挙げられます。
(※ドライバーが増えず車両も足らない状況で取扱い量が増えれば新規案件に取り掛かることはできません。)

以上のことからも、ドライバー不足・車両不足・既存荷主企業の物量増によって、運送会社は新規案件に対して前向きに検討することができないのが実情です。

また、今抱えている仕事だけで新規ドライバーの確保は困難であるため、既存荷主企業に対して値上げ要請の打診を行うことも予想されます。
利益率の高い仕事であれば請け負う姿勢も見受けられる(※昨年12月のスポット案件では2トン箱車両と4トン箱車両が35,000円/日と45,000円/日と規格外の運賃が提示されていた)ため、今後は運送会社が仕事を選ぶ動きになると言えるでしょう。

荷主企業として取るべき対策

運送会社が新規案件に取り掛かりづらいため、荷主企業としては既存の委託先を切り替えたくても変え難い状況です。
また、切り替えるにしても契約単価が現状よりも高くなる可能性があるため、荷主企業としては非常に厳しい時代に突入したと言えます。

ただ、だからこそ荷主企業として把握しておくべきことがあります。
それは自社が契約している単価が市場単価と比較してどの位置にいるのかを明確にしておくことです。
市場単価よりも廉価であれば値上げリスクが高いことがわかり、値上げの要請のどこまでの範囲を飲み込むべきなのか?どうすれば最小限に抑制できるのか?を事前に検討しておくことができます。

また市場単価よりも高価な場合は、その数値を基に委託先へ単価交渉を行うことができるでしょう。
つまり、事前に理論武装しておくことが荷主企業として取るべき対策となります。

自社の単価と市場単価を知るには物流コンサルティング会社や3PL会社を上手く活用して調べるのも一つの手です。
自社の水準を明らかにし今後の運送会社の動きに備え、自社のあるべきロジスティクスを構築していってください。

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