第54回 物流子会社の彷徨(4)

Pen Iconこの記事の執筆者

赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

物流子会社の使命とは、親会社の物流業務を請け負い最高の品質でローコストなオペレーションサービスを提供する事であります。

品質については、求められるだけを答える事が至極当然であり、結果として他社が真似できない、最高の品質となります。

しかし、品質を追求するあまりコストに負荷がかかり親会社の物流費は 逓減できない環境を生みました。

品質を追求するあまり、コストが適正化されない現象です。

適正化とは、市場価格であり一般流通価格(物流会社が請け負った時の価格でもある)に準ずる事でもあります。

継続的な改善活動を行えば、一定のコスト削減は可能です。

また、それを実現している企業も多くありますが、親会社が求める「競争優位な物流戦略」の中身には、コストダウン要求が多大にあるものです。

物流子会社の視点から見ると、親会社の成長規模のみではいずれ限界がきます。

そこで継続的な改善のみでは達成困難となりました。

この親会社の要求を満たす次なる施策が規模の拡大によるボリュームメリットと、シナジーの追求であります。

規模の拡大=「外販獲得」の図式となり、多くの物流子会社は競って「外販」戦略を打ち立てたものです。

外販を始めた当初は、外販比率の拡大戦略が取られました。

いわゆる売上至上主義が経営陣の視点となり、営業部隊への評価となってしまいました。

売上至上主義に答える営業開発部隊は、その使命を果たすべく外販を獲得し売上貢献を具現化します。

しかし、この外販に大きな落とし穴がありました。

外販を獲るには、同業他社との厳しい競争に打ち勝たなくてはならず、当然コスト最優先の顧客が対象となります。

親会社で培ってきたノウハウや品質を、コスト削減テーマが主体の一般競争へ足を踏み入れてしまいました。

外販比率が高まり、売上も上がりました。規模の拡大は進み、利益率が向上するはずが、逆の結果として判明したのはつい最近の事ではないでしょうか。

顧客別収支や、部門別収支などを細かく分析すると、新規で獲得した外販顧客や外販事業が、赤字であった事が判ったのです。

結果的に、本来の物流子会社の使命であります「親会社の物流費を下げる」ための、外販活動が裏目に出てしまいました。

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

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