第5回 在庫削減のポイント~適正化プロジェクト~

Pen Iconこの記事の執筆者

赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

前回は、製造・販売(営業)・物流・情報システムなどの関係者が企業の現状を把握・共有し“製販物情”のコミュニケーション体制を構築する事が、改善の第一歩と書きました。

そこで、ある食品卸企業の在庫削減プロジェクトで導入し削減に成功した事例をお話しします。  

その食品卸A社は、社内の中で販売部門の影響力がとても大きく、 物流部門や情報システム部門は販売戦略に基づいた支援部門と位置付けされていました。

「欠品」を恐れ、誰がみても過剰な在庫を積み上げていたのです。  

社内の会議では、販売部門長が議長を行い在庫削減よりも「欠品率」をどう無くすかが、毎回の議案となり侃々諤々と意見を論じていました。  

購買(仕入)は販売部門が行い、物流部が在庫管理をしていましたが、 発注点や発注量の管理は販売任せとなり、定期的な見直しをされていませんでした。

最初に、販売と物流とで「適正在庫化プロジェクト」を発足させ双方の立場から意見を抽出するとその殆どが、相手側部門への不満合戦!

それらを明文化し、二回目のミーティングで双方の役割を交代して課題について考えるようにしました。

販売部門員が物流部門員となり、物流部門員が販売部門員となって、討論を行うのです。

当初は戸惑いから、あまり活発な意見は出てきませんでしたが、30分もすると参加メンバーも要領を得て、様々な解決に向けた意見が出ました。  

物流部門長(実際は営業部長)より、『自部門でコントロール出来ない商品は在庫管理なんて不可能だ!』。『では、在庫責任は物流部門で持つが、仕入 に関わる購買課は物流部の管理下にしよう!』、『販売予測に関するデータを月次から、周単位に変えよう』など自部門では発言しないような意見が、部門逆転により、忌憚なく発言されました。

これら、プラス的な要素の意見だけを改善プランとし、三回目以降のミーティングで本来の役割に戻って具現化出来るように、詰めていきました。  

この企業の場合、5回目のミーティングで(1)組織変更(2)機能変更 (3)ルール変更など大小10以上の事柄が決定し、その後役員会を経て実行され、約半年後には大幅な在庫削減&適正化と成りました。  

各種の理論的な在庫削減手法も、具現化における実行段階では利用されましたが、これは戦闘レベルの一つの方策であり、多くの時間を割く事ではありません。  

1.戦略 ⇒ 2.戦術 ⇒ 3.戦闘 とその事案がどのレベルにあるかをよく見極めて、実行するための関係者コミュニケーションミーティングこそが、在庫を削減し適正化を保持する“コツ”であった事例です。

次回…『3PLはSLA(サービスレベルアグリーメント)導入が成功のコツ!』

Pen Iconこの記事の執筆者

赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

その他の記事を読むArrow Icon

ページの先頭へ