第35回 ロジスティクスとCRE戦略

Pen Iconこの記事の執筆者

赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

最近、不動産関連の方とお会いすると決まって『CRE』と言う言葉を口にします。

『CRE』とは、コーポレート・リアル・エステートのことで、企業の保有する不動産価値を最大限に高め、その不動産を利用して企業価値向上に努める考え方であり、その戦略をCRE戦略とも言います。

物流業界におきましても、外資による不動産ファンドの普及は目覚しく、昨今の大型物流施設は、ファンド保有の物件が多く物流資産に対する企業の考え方も大きな変革が起きています。

自社で土地を保有し、長期間で建物や設備を償却しながら利益を創出していくモデルが従来の倉庫業や物流業のあり方でもあり、B/SとP/Lの連動した営業キャッシュフローが、日本型ロジスティクスといえるのではないでしょうか。

又、顧客(荷主)との契約年数の短期化(場合によっては単年)の流れも著しく、大型化する物流施設の自家保有を避ける(オフバランス)手法はある意味時代の潮流に乗り、近代的なロジスティクス構造かもしれません。

しかし、物流業の原点に回帰すると利益創造の本来像は、顧客に代わって輸送・配送・保管・流通加工・入出荷作業などを委託されより専門性を持って事業会社としてのオペレーションサービスを提供する組織体でもあります。

ノンアセットの3PL事業者と、元来アセット型であったはずの物流事業者が同じ不動産戦略で業容拡大を目指すことは、少し近視眼的な考え方とも思われます。 

本来の企業としての役割と社会責任を考慮すると、物流業界におきましても『CRE戦略』は、一考するべきものだと感じております。

新規事業を行うにあたっては、大きな飛躍の可能性と相応のリスクが伴っています。

リスク回避のメンタリティをあまりにも重んじていまうと、本来のあるべき企業像を失う事にもなりかねないのでは、ないでしょうか。

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

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