第277回 物流SLM(サービスレベルマネジメント)その2

Pen Iconこの記事の執筆者

赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

「物流SLM(サービスレベルマネジメント)の有用性」

第二四半期の折り返しになりますが、国内物流が低迷しています。

物流コンペにおける物流各社の企画や見積りに、とても強い獲得意欲が感じられます。

原油相場は、WTI先物が1バレル40ドルを切る局面もあり、輸送各社はコスト低減が図れていますが、荷量回復なくしては成長が厳しい状況です。

荷主企業としては、物流コストを抑えるマネジメント体制の確立と、物流サービス向上を推進する為の知識獲得は、人手不足が深刻な物流業界と向き合う上で、重要なミッションとなります。

前号に引き続き、物流SLA(サービスレベルアグリーメント)の導入に欠かせない、物流SLM(サービスレベルマネージメント)について考察致します。

例えば、保管スペースについて「専有坪契約」をしている荷主企業は少なくはありません。

今回の事例はそんな荷主のよくある課題について考察します。

荷役や輸送は変動契約だが、保管に関しては固定契約にする。

この方式で契約した荷主企業にとってのメリット/デメリットは以下の通りです。

■保管料を固定契約にした場合のメリット

1.専有契約のため倉庫内レイアウトや保管数量を自由にコントロールできる
2.保管コストが一定である
3.空きスペースがある限り、形状の違った商材も収納できる(返品や什器など)
4.各種のマテハン機器が導入しやすい

■保管料を固定契約にした場合のデメリット

1.保管数量の上限がある
2.保管数量が大幅に減少しても保管コストは下がらない
3.撤退時に、契約内容によっては現状回復費用が発生する
4.業務委託におけるコンプライアンス(請負契約)に細心の注意が必要

特に問題となるのは、荷量が大きく増減した場合の物流企業が取る対応に苦慮するケースです。

繁忙期において、物量が増大することはデータからも経験則からも予測できます。

問題は、契約時に固定坪数を何坪にするのかを決定するプロセスが、どのようなロジックを用いているかが重要です。

なぜならば、物流企業が設計した倉庫配置図を何ら検証することなく、 坪数を決定してしまうと後々増床トラブルになることがよく見受けられるからです。

□在庫総数は増えていないのに、増坪を求められる

□保管ラックに空棚があるにも関わらず、増坪を求められる

□使用しているパレットへの積載数が低く見えるにも関わらず、増坪を求められる

これらの事象は物流倉庫でよく目にする光景です。

荷主からは「保管オペレーションが下手なのでは?」といった意見が聞こえてきます。

一方、物流企業からは「委託開始当初とは在庫のあり方が変化し、在庫SKUが増えている」などの反論も聞こえてきます。

このケースのトラブルは、双方どちらが正しくて、どちらかが間違っている訳ではありません。

ここではっきりしておくことは、契約当初の在庫実態・保管実態と現実がどう変化しているか?を正しく分析することです。

交渉力が弱い方が妥協する関係では、健全な取引パートナーとは言えません。

物流委託契約(請負契約)は、料金の定義を明確にし、責任と役割を明確にしておかないとなりません。

取引基本契約書と料金に関する覚書だけでは、サービス定義やサービスレベル(水準)が明文化しづらいため、物流SLA(サービスレベルアグリーメント)を活用します。

その物流SLAを日々コントロールして行くことがSLM(サービスレベルマネジメント)となります。

次回は繁忙期における増坪問題について、更に考察致します。

次号に続く。

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

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