第261回 変貌する物流戦略その7

Pen Iconこの記事の執筆者

赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

「荷主企業の取るべき施策」

荷主企業における物流オペレーション部門に求められる知識とスキルは
以下7項目です。

1. 現場遂行力(オペレーション力)
2. スタッフマネジメント力(募集、採用、教育など)
3. 倉庫ロケーション設計力
4. 倉庫情報システム(WMS)理解力
5. 輸配送マネジメント力
6. 改善力
7. 生産性分析力

今号から、ひとつづの項目について考察していくことにします。

1.現場遂行力(オペレーション力)

自社物流を展開している荷主企業は、日々現場を運用していかなくてはなりません。

どのような業種・業態においても、一年間を通常期・繁忙期・閑散期の3区分
に分けることができます。

この3区分における現場のあり方は、それぞれに違いがあることを良く理解し、的確に現場オペレーションを遂行することが肝要となります。

(1)通常期における現場オペレーション

通常期は、現場をマネジメントする部隊にとって最も多忙な時期となります。

現場におけるオペレーションを遂行する上で、業務標準化が品質・コストを管理するための重要施策となります。

この標準化を実行するために、各工程を再チェックした上で、定型作業と非定型作業の仕分けを行います。

属人的な作業や工程は、この通常期に徹底的に改善します。

ブラックボックスの排除こそが、標準化の道しるべとなります。

特に、属人化されている工程をマニュアル化するなどの改善活動が一番行いやすい時期でもあります。

現場マネジメントにおける各種のKPI設定は、この時期に計測しておくべきでしょう。

5Sのメンテナンスも、この時期に実行しておかないと、繁忙期に突入するとどうしても出荷優先となり、疎かになってしまいます。

現場内の表示やラインメンテナンスなどに最も適した期間なのです。

(2)閑散期における現場オペレーション

閑散期に取り組むべきことは、現場の圧縮化です。

繁忙期・通常期と比べ、閑散期は在庫量や入出荷量が減少します。

物量が少ないにもかかわらず同じ面積を使い、同じ人員でオペレーションを実行していては、物流コストは永遠に削減されません。

物量が平均値より少ないこの時期にこそ、固定費と変動費の両面を圧縮することが物流オペレーション部隊の使命となります。

たとえ自社所有の倉庫であっても、在庫量に比例して保管面積を圧縮することが、繁忙期にパンクさせないための有効な施策となります。

物流現場においては「どうせスペースが空いてるから、使ってもコストは変わらない」と思っている時点で、負け組現場となってしまいます。

倉庫マネジメントでは、1坪当り何個や、1坪当り何○などの数値をKPIとして管理していきます。

設定されたKPIを遵守していれば、在庫量が減少すれば保管使用面積は少なくなるはずです。

倉庫人員に関しても、全く同様なのです。

出荷荷量の少ないこの閑散期こそ、物流コストを大幅に削減させるネタが埋まっているものです。

(3)繁忙期における現場オペレーション

繁忙期は、とにかく日々の現場を異常や遅滞なく回していくことです。

一般的に、出荷量の増大が終了時間の遅れに直結すると思いがちですが、実は、出荷量の増大よりも入荷・在庫計上の遅れが直接的に出荷に大きな影響を与えるのです。

物流現場では「入荷」が一日の始まりであり、ここを計画通りに終わら
せることが、その後の出荷を無事に出し切る最大のポイントとなります。

そのために、季節波動の影響を受ける商品や、B・Cランク品などの入替を繁忙期前にどれだけ実行できているかが極めて重要な施策となるのです。

従ってこの繁忙期に、在庫品の棚移動や業務プロセスの改善などは実行すべきではありません。

結果として、閑散期に実行した圧縮法が、この繁忙期に役立つことになります。

通常は不要な人材派遣スタッフや他部署などの応援要員も、標準化され
た工程と、わかりやすいSOP(作業手順書)などのマニュアルによって、適切な配置が実行されます。

繁忙期前の対策実行こそが、繁忙期を無事に乗り切るキーファクターとなるのです。

物流オペレーション担当は、これら通常期・閑散期・繁忙期を計画的に運用することが、最も求められるミッションではないでしょうか。

・・・次回に続く。

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

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