第24回 物流M&A(3)

Pen Iconこの記事の執筆者

赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

物流企業の価値とは、株式時価総額を鵜呑みにしていいのでしょうか?  

その答えはNOであります。  

純資産+プレミアム金額=買収金額の目安となるわけですが、財務的な価値評価のみで、物流企業を判断してしまうにはとても危険な産業体であります。  

例えば、将来産出すキャッシュフローから現在価値を求め収益性・安定性・成長性・社会性などを考慮しある定義に基づいて企業の価格を算出した場合、社会性以外はとても簡単な要素で崩壊する可能性があります。    

B/S(貸借対照表)、P/L(損益計算書)とキャッシュフロー計算書 で一定の企業価格は算出できますが、根本的な考え方として、当期に発生した利益(営業利益)は本当に、将来も稼ぎ続ける事が可能か?という視点で考えてみます。

物流企業はサービス業であり、運送や保管や作業などの役務を提供してその対価を料金として売上が計上されます。  

それらの提供役務は、契約上の縛りよりも至極簡単に増減もしくは白紙になりえる事があるからです。

安定的に当期に発生した利益を出し続けるには、顧客の満足度を高め、 顧客の欲求を常に具現化できる企業体質が求められます。  

誰にも真似できない強みや、絶対に解約できない契約などそう簡単にはある訳が無く、常時同業他社との戦いで揉まれ続け、受注と失注を繰り返りながら成長をしていく産業体であります。  

事例でいくと、新規受注が多発した当期は利益率が著しく下がっても案的期に入った来期は、利益率が向上するなど、利益と損失の内容が成長していく過程で必ず変化していく事も物流業の特徴です。

それらの特徴を十分に理解せずに、3期分の財務諸表とその時の取引先(荷主)だけで収益性や安定性は計れません。  

その逆で、強みのあるシクミや直ぐに真似の出来ないサービスを提供していても、企業規模が小さなために企業価値も過小に評価される場合もあります。  

では、どういった内容を評価し価値として認めていけばよいのかを次週号にて説明します。

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

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