第224回 ポスト3PLの時代(22)

Pen Iconこの記事の執筆者

赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

前号に続き、Web通信販売企業A氏から相談された「物流コンペ」の模様を紹介します。

物流SLA(サービスレベルアグリーメント)とは、顧客にとって、最も利益や利便をもたらすための取り決めを行い、明文化することなのです」

物流SLAは、荷主にとっても制約条件となり、自ら縛りを作るようなものではないのですか?

A氏は、思わずコンサルタントB氏へ質問を投げかけた。

「例えば、1日当りの出荷件数に最大値を設定することは、荷主にとって極めて不利益ではないでしょうか?」

「通常であれば、物流会社さんはどんなに多くても全て出荷するのが当たり前であり、それを荷主自ら〇〇件以上は出さなくてもいいですよと、約束してしまうことですよね。」

コンサルタントB氏は、「たしかに、仰るとおりです。その〇〇件を明確にすることが物流SLAの重要な意味なのです。」

「物流の世界では、1日の出荷件数は、閑散期と繁忙期では約2倍程度の格差があります。ネット通販業界でも同様であり、前日対比200%などは十分にあり得ることなのです。」

実際の現場では、作業計画や要因計画に基づいた人員配置が行われています。

残業や他部門などの応援によりある程度の波動は吸収しているのですが、前日の倍やそれ以上ともなると、全てが対応できなくなることも十分想定されます。

その想定を事前にどこまでしておくかが、物流SLAのポイントとなります。

当日出荷についての責任区分を明確にし、顧客へ迷惑をかけない取り組みこそが、物流管理者の考える重要なマネジメントなのです。

「1日の最大出荷件数が明確になれば、それを超過した場合を想定して、対策を事前に構築できますよね。それが、物流SLAの利点となります。」

確かに、不確実な状態での出荷業務にはリスクが伴っている。

出荷の上限を取り決めれば、それ以内に関しては安心していられるのも事実である。

A氏は、荷主として包含する自社のリスクについて改めて考えることになった。

次号に続く…。

Pen Iconこの記事の執筆者

赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

その他の記事を読むArrow Icon

ページの先頭へ