第209回 ポスト3PLの時代(7)

Pen Iconこの記事の執筆者

赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

前号に続き、Web通信販売企業A氏から相談された「物流コンペ」の模様を紹介 します。

コンサルタントBから現状整理と今後の施策についての発表がなされた。

A氏は、Bが一度も物流センターの視察を行わず、自社の物流についてまとめていると聞いていたが、その報告には懐疑的な見方をしていた。

物流センターで利用している倉庫管理システム(WMS)は委託先の所有物であり、 当時既存の委託先を選定した前任者は既に退職をしている。

物流センター内で、 どのような物の流れでどの程度の人が働いているなどは、A氏ですら把握していないのが事実であった。

しかし、Bがまとめた自社の現状整理リポートは業務プロセスを概要図として表し、 各作業工程はフロー図となって物と情報の流れがA4サイズ1枚にわかりやすく纏められていた。

各工程を通過する数量も作業工程毎に記載されているようで、自社の物流センターが この1枚のリポートによって初めて可視化したものと思われる。

物流をあまり理解していない経営幹部も、情報の流れと物の流れとそこを通過する商品や伝票などの数量が明確に表現されているため、至極自然な形で受け入れられた 様子である。

なかでも目を見張ったのは、情報と商品の受け渡しや責任区分が明確にされており、自社で責任を持って管理すべき箇所と委託者が責任を持つ箇所が入荷・出荷・ 返品・在庫管理などの各項目別に区分されていることである。

これまでは漠然とした区分で荷主と物流事業者の責任や役割を判断していたが、 コンサルタントBが作成した業務プロセスフローを用いて、責任と役割を区分し明示することで、いかに自社が物流委託に対して何も明確に管理されていなかったことが如実に物語っていた。

さらに驚いたことは、各作業プロセスに数量と併せて作業時間も明記していた。

コンサルタントB氏によると、この作業時間はあくまでも「標準作業時間」といって、一般的な作業内容をB氏が所属しているコンサルティング会社が保有しているデータベースを用いて分析し、推測した想定値との説明があった。

物流コンペを実施しているA氏にとって、既存委託先とのトラブルやコンペ参加企業からの提案内容に苦慮している現実は、全て自社の物流を十分に知り得なかったことが原因であり、それを果たそうとしていないA氏自身に問題があることを始めて自覚した。

コンサルタントBの行った約30分の概要説明で、自社の物流が明確になったと安心した A氏は、今後の方策についてもB氏を起用したことによる安堵の気持ちで一杯になり、 ほっと胸をなでおろした。

しかし、その後A氏を愕然とさせる報告がコンサルタントBより発表された。

次号に続く…。

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

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