第13回 コストダウンと品質向上その3

Pen Iconこの記事の執筆者

赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

今回は、品質の向上を最優先課題として捉え、社員一丸となって品質を高めた物流センターが、結果的にコストダウンによる大きな利潤を得た事例をお伝えします。  

A物流センターは日曜雑貨中心のDCとして稼動を開始した。

稼動開始後6ケ月が経過したが、誤ピックや誤出荷が減らずに顧客からは毎日のようにクレームが続いていました。

現場の各リーダー(入庫・保管・出庫)はどの工程に問題があり、どこがボトルネックと成っているのかを話し合ったが、 初心に返って検品作業を増やす事を導入した。

作業フローにおいて工程を増やす事は、コストアップに直結するものだが顧客の信頼を取り戻すには コスト度外視案が採用されました。  

まず最初に、入荷商品の棚いれ検品。

次に一時ピックの検品。

そして梱包前の最終検品と3工程の検品作業を増やし、約8%のコスト増が発生した。

しかし、出荷精度はこれまで500PPM/ピースあった誤出荷が約1ケ月後には30PPM/ピースまで低下し、大幅な品質向上を達成した。  

次に、8%アップした作業人件費をどう改善して元の収益構造に戻すかが話し合われたが、工程を削ると品質の低下を招くとの不安から、決定的なコストダウン策が見つからないまま数ヶ月が経過した。

この赤字運営状態は企業経営上、永く続くものでは無いため早急な改善が必要となる。

コストダウンに向けて実行した事は、作業単位の数値化である。

入荷・入荷検品・棚入れ・ピッキング・検品・仕分・検品・出荷などの工程と事務所でのピッキングリスト出力・伝票発行・納品書貼付・各種入力作業など。

これらの工程毎に生産性数値を測定し、現状に対して将来の目標数値を設定する。

まずは、各々が部分最適を目指した効率化を行い目標数値に達すると、連携した前工程と後工程の待ち時間や重複作業を見直して、 全体最適を計画した。

その結果、作業品質を落とさずにムダを省いたコスト削減が達成できたのだが、何故コストダウンが果たせたのかと言うと、全体と各工程毎に作業進捗を管理するスーパーバイザーを配置した事が、最終目標である全体最適へと繋がったのである。  

物流センターのスーパーバイザーとは、ルーチンワークを持たずに作業進捗のみを監視し、相互補完や人・モノのコラボレーションをいかに上手く運営するかが、ポイントとなる。

フレキシブルな作業体制を構築するには現場にその視点を持った“目”が必要となり、その“目”が人を動かす。  

極論で言うと、社員はこの“目”=スーパーバイザーだけで十分でありその他はパートタイマーや人材派遣スタッフへとシフトした事が、成功のコツであったものといえます。

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

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