第294回 東京オリンピック・パラリンピックと物流(3)国土交通省の取り組みを知る

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

本年7月に東京・大阪で開催し、締め切り前に売り切れとなった「物流センター立上げ・拠点移動 成功ノウハウ大公開」セミナーを再度開催します。多くの失敗事例を基に、成功するための手順を1年前から時系列でご説明します。
今回も締め切り前「完売」が予想されますので、お申込みは是非お早めにどうぞ!

今年になってから、物流コンペの依頼が後を絶たない状況です。

なぜ今なのか?

依頼人である各社の事情はそれぞれですが、荷主企業にとって看過できない課題が見えているからだと思われます。
2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。この国家プロジェクトによって、荷主各社は日常業務へ大きな影響が心配されます。

僅か2週間のイベントではありますが、その影響たるものは2018年から始まり、砂地に水が染み込むように物流各社を席巻すると予想されます。

今、荷主企業にとって物流コンペは、まさに旬となります。

2017年上期までは、3PL各社も新規案件の企画設計やコスト算出が可能と思われますが、2018年になると倉庫・荷役・配送と全ての物流コストが高騰します。

今、物流コンペをやっておかないと、この後は予想が付かない着地になるのでは……?荷主企業の正直な心情でしょう。

今回のテーマは、東京オリンピック・パラリンピック開催に関わる物流への影響をテーマに考察しています。

国土交通省が発表している“2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けた国土交通省の取組”を参考に物流業界への影響を考えてみることにしました。

3.外国人旅行者の受入

行政機関が計画する施策は以下の通り。

・“2020年オリンピック・パラリンピック”を見据えた観光振興
・他言語対応の強化
・無料公衆無線LAN環境の整備促進
・宿泊容量の確保および宿泊施設の情報提供
・国際都市にふさわしい景観創出等のための無電柱化の推進
・水辺環境の改善
・手ぶら観光の推進

五輪期間中の来場者数は延べ1,000万人(1日当り92万人)と言われています。
この数値はチケット発売総数ですので、1人平均1.5枚のチケット購入を仮定すると、ネット来場者数は666万人となります。
この内、外国人旅行者は過去のオリンピックから推計すると約16%となり、約100万人程の海外旅行者が東京へ大挙して来日します。
昨今のポケモンやマリオなどのアニメブームが世界規模で浸透すると、更なる上積みも予想されます。

これらの現象を物流環境として捉えると、以下の課題が想定されます。

・羽田、成田空港と都心間のアクセス混雑による大渋滞
・東京及びその周辺宿泊施設に膨大な宿泊客が殺到することで、その食を支える食料品備蓄倉庫の飽和状態
・食料品およびお土産品や一般品を配送する車両不足
・小売業の強い募集意欲による人材広告費の高騰
・パートアルバイトの時給高騰
・パートアルバイトの争奪戦による人手不足
・若手のボランティア就業による人手不足

概ね、1.倉庫不足 2.車両不足 3.人手不足と「3つの著しい不足」が発生します。

この現象は突風のような一時的なものではありますが、全て通常業務・一般貨物へ大きく影響することになります。

東京オリンピック・パラリンピックの物流対策は遅くても来年2017年度中には検討しておくべきでしょう。

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

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