第1回 2015年の物流業界時流(1)日本型3PLモデルの再構築

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

平成二十六年は「甲午(きのえうま)」の年だった。「甲」は十干の一番目で物事の始まりを意味し、過去十年が改められる年。「午」は組織や仕組みに対して激しく動き抵抗する意味があるという。
物流業界は激動の一年だった。ドライバー不足による運賃高騰が深刻な問題として社会全体へ顕在化。四月に導入された消費税率引き上げが未曾有の大混乱の引き金となり、国内物流全体に影響が及んだ。その後は一転して荷動低迷期が続き、物流企業業績を増収増益から減収減益に陥れる混迷ぶりだった。
 来年は「乙未(きのとひつじ)」。多くの抵抗や困難を受けながら、新旧の勢力が衝突し、多事多難な一年とのこと。無事に乗り切るには、理念や規範を重んじた誠実な対応が求められるのではないか。本連載では、日本型3PL(サードバーティー・ロジスティクス)モデルについて、現在の物流業界の包含する課題を踏まえつつ、生き残り戦略を探りたい。
 一九九〇年代初頭から急速に普及した日本型3PLは、本来の欧米型3PLとは別個の取引概念として普及してきた。  国内の多くの荷主企業が経営戦略の旗印とした“集中と選択”により、「物流」は外部リソースの活用が時流となり物流アウトソーシング市場が活発に成長。物流企業の3PL戦略が急加した。
 ここで「日本型3PL」としているのは、荷主と物流企業の取引関係が、欧米型3PLと比べて少し様相が異なっているためだ。欧米型は荷主と3PL事業者の進むべき利潤獲得ベクトルが一致している。分かりやすい特徴として、欧米型では両社が活動した改善効果による利潤を、可視化された論理を用いて分配するゲインシェアリング(成果報酬)制度が確立されている。
 一方、日本型の多くは荷主と物流企業との関係が「利益相反」であり続けている。
 いまこの日本型モデルには、パラダイムシフト(認識・価値観などの劇的な変化)が起きている。本来の3PL概念には至らないまま急拡大した一つの取引モデルが、新しいモデルへの変化を求めているように感じる。
 物流業界では、以下五点が喫緊の課題・問題点として想定される。①解決策が不鮮明な極度のドライバー不足②地方空洞化による拠点再配置施策③輸配送費および人件費上昇による収益率のひっ迫④日本型3PL機能崩壊による新物流システムの構築⑤グローバリゼーションへの対応―。

次回から、これらについて考察していきたい。

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赤峰 誠司

船井総研ロジ株式会社 取締役 常務執行役員

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